移動する生活物語

「移動する家」の物語

STORY 1「自由な街、自由な路地」

東京郊外、八王子の山のふもとに、大きな草原の空き地がありました。もとは畑であったのですが、地主が宅地に変更する申請をして、しばらくそのままになっています。そのうちここから縄文土器が出土して、しばらく学術調査発掘が行われていました。いまは調査も終わり、静かになりました。
 幹線道路に近く、交通の便の良いこの場所が昭和基地のようにいろんな箱が置かれ始めました。サトコウのBOXユニットコミュニティーです。
 まずはじめに、円形のコミュニティーユニットがこの土地に置かれました。これは地主の持ち物として設定されたものです。コミュニティーユニットには、共有のリビングスペース、パソコンスペース、などが設置されています。その円形のユニットに、あめーばの触手のように、BOXユニットが連結されていきます。皆、BOXユニットをリース契約し、リーズナブルな地代だけを家賃とする契約で、申し込みをしてきた人たちです。
 もちろん、コミュニティーユニットに連結することを望まない人もいます。その人たちのBOXユニットは、指定された場所にめいめい思い思いに配置されていきます。

 わずか一週間ほどで、この草原の空き地は、小さな街のようなコミュニティーになりました。ちょうどいい距離感で配置されたBOXユニットの間には、いい感じの“路地”ができました。特に意図していないのに、ひとがちょうどいい距離感をそれぞれ保ったことが、“いい感じの路地”を自然につくりました。路地では、これまたごく自然に近所づきあいが生まれました。特に特別なこともない、“世間話”です。またどこからともなく猫も住み着きました。
 近所の子供たちも、わざわざこの草原の空き地に来て、路地で遊び始めました。開放的なのに、どこか迷路の様で、言葉では説明できないですが、とても落ち着く“間”ができています。
 東京近郊や、札幌、仙台、横浜、名古屋、新潟、京都、大阪、神戸、広島、福岡には、同じようなBOXユニットコミュニティーが賃貸され始めました。ちょっと静かなブームになっています。誰にも束縛されないごく自然な感じ。空気か吸いやすいような感覚。それでいて、何気ない近所づきあいもある。そんなところがウケテいるのです。また、空きスペースが見つかれば、全国どこのコミュニティーへも移住ができます。専用のトレーラーで、BOXユニットごと運んでくれるのです。そういえば、隣の二人組は、それぞれ福岡から移住してきた人たちです。
 BOXユニットを所有して、初めて自分の居場所の実感が持てました。自分の家ってこんな感じなんだな・・・。と初めてわかりました。気分最高です。内部の壁なんか、大家さんを気にせずに、自由にデコレーションできます。そりゃ自分の家だから。
 もっとたくさんのBOXユニットコミュニティーができて、バイトの斡旋なんかもコミュニティー間で成り立つようになれば、最高だなと思っています。

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